
八月三日にひろったから「ハミ」と名づけた。
大雨の日、境内にうずくまていた仔猫はカラスに片目をつつかれてつぶれていた。
それでも生きている証に必死に声をあげた。
ようやく「ひい」と鳴くしかできなかったけれど
それは私の耳に届いた。
びしょびしょで、目をつぶされたみずほらしい仔猫は、震えながら私の手の中にくるまった。
ハミ
八月に拾ったその仔猫は
次の年の九月に死んだ。
がりがりの震えた仔猫はぷっくり太った愛らしい猫になり、
誰もがこの猫に二度と不幸なんて訪れないと思った。
でも、ある日ハミは行方不明になり、次の日の夜ようやく悲しい姿で見つかった。
ハミは車に轢かれていた。
しかし身体はきれいで口元にうっすら血がついているだけだった。
涙もなく呆然と抱き上げると
おなかには泥のあとがついていた。身体を地面にこすり付けたようなあと。
ハミは動けなくなった身体を引きずりながら数歩進んだのだ。
最後まで家に帰りたかったんだ。
目は生きているように見開いていた。にごってしまった片目もはっきりと開いていた。
辛い身体を引きずりながら必死に目を開き進んだハミ。
その目で、私たちを見たかったのだろう。ぎゅっと抱きしめられて、「痛かったよぅ」と甘えたかったのだろう。
八月三日
その日をわたしは「ハミ日」とした。
私はハミが大好きだった食べ物を出し
そしてハミのことをあれこれ思い出す。
この日は涙が止まらない。
後悔や、いとしさや、いろいろなものでぎゅうぎゅうになる。
「1年間、うちの子で幸せだった?」
同じ質問を何度も繰り返す。
他の日々は日常に追われ、新しい猫や犬のことでいっぱいなくせに。
残された人間なんて情けないものだ。
薄情でそして身勝手なくせに未練がましい。
でもこれだけは約束する。
私が生きている限り「ハミ日」は続き
そしてわたしが
天に召されたとき・・
こんどこそ必ずハミを抱きしめる。
ぽちおねがいします